Visionで、社員の行動を禁止してはいけない

Visionは、何かを禁止するものではない。一方、ルールは何かを禁止するものだ。

もっというと、ルールは、必ず何かの禁止を伴う。

何も禁止をしないステートメントは、ルールではない。ルールの意味づけを与えるステートメントを、なんと呼べばいいかというと、それはガイドラインとか、ベストプラクティスとか、ビジョンだとか、そういった類のものだ。(あえて適当な言い方をしています)。

ルールは、ほとんどの場合明文規定でなければならない。明文化していないルールは、実質的には禁止の機能を果たしているかもしれないが、意思をもって違反行為をするという事象が起きたとき無力だからだ。また、そのルールが組織のビジョンを阻害する事態に至ったとき、変更できない。逆に言うと、その違反行為や、ルール自体が問題となる状況を何らかの方法で防ぐことができる限りにおいて、ルールは明文規定にする必要がない。

このようなルールの理解をすれば、組織のVisionをルールの形で示すのは、ルールとルール以外の境界を曖昧にしてしまうので、全くだめというわけではないのだが、良い手ではない。

例えば、GoogleのDon't be evilというのは、企業の倫理観を示すステートメントだが、禁止の構文となっており、ルールとして読むこともできる。evilというものの定義がされないと、実質的なルールとして運用出来ないはずなのだが、そのevilを様々に解釈することが出来てしまう。経営陣が考えるevilと、従業員が考えるevilが異なると、指揮命令系統に齟齬をきたす。

実際、このDon't be evilを盾にとった従業員の反対騒動なども起きている。