ルールとコストはセットで、あるルールを決めると、それに伴ってコストが生じます。
例えば、毎朝5時に起きるというルールにしたら、5時に起きられるように早く寝るか、眠くても強制的に起きるようにしないといけません。
早く寝るとすると、夜の時間が短くなります。例えば恋人に電話するとか、お酒を楽しむとか、といったことができなくなるかもしれません。 眠くても強制的に起きるようにすると、寝不足のぼんやりした頭で、不効率な仕事をしなくてはいけなくなるかもしれません。 これらの不利益は、その本人が負担するべきでしょうか?
本人が決めたなら、本人が負担すればいいでしょう。 誰かが要求して決めたなら、その誰か(例えば、会社)が負担するべきなのではないでしょうか? 政府が決めたなら、政府が負担するべきでは?
普通、人に要求する、という行為をすると、コストを負担する必要があるのです。
レストランで、お金を払わず食事をすることはできません。コックさん、ウェイターさんに料理を提供してもらうよう要求しているので、お金を払うのです。
しかし、ルールとなってくると、守るように要求する側が、コストを負担しないケースがあります。
それは本人が同意する場合です。 しかし、同意は、家族や恋人の愛情で成立することもあれば、何らかの脅しに屈してしぶしぶ同意することもあります。 自由意志であればいいでしょう。愛情や、脅しの場合、しょうしょう厄介です。
早起きせよ、というルールがある会社の就業規則になったとして、 それに従わないとすると、解雇のリスクがあります。
母親が、子供のお弁当を作るために早起きをしなければならないとして、 それに従わないとすると、昼食抜きの子供がおなかをすかせ、惨めな思いをするかもしれません。
これらは自由意志といってもいいかもしれませんが、ややずるい感じがします。なぜなら、強制力があるからです。会社の就業規則も、おなかをすかせた子供も、どちらもある意味で強制力があります。
さて、これらの強制力によって、早起きのコストを従業員や、母親に負担させているのだとすると、 このコストは、ルールのコストだといえます。
ルールを強制する側は、ルールのコストを無視しがちです。会社も、早起きをすることで生じたコストを負担してくれないかもしれませんし、子供もありがとうの一言も言わないかもしれません。
もし、コストが見えたらどうでしょう。従業員の早起きによって一人当たり毎朝1200円コスト負担をしているとしたら、母親が毎朝2000円コスト負担をしているとしたら。 この数字をもし合理的に説明できるだけの根拠があるとすると、従業員は組合を通じて政治力を発揮するかもしれません。母親も子供の小遣いを減額できるかもしれません。
根拠のある数字は交渉力を生みます。 合理的な説明をされると、人は従わざるを得ません。 コストを合理的に算出できるようになるということは、 交渉を通じて、現実世界を変えることにつながります。
さて、本ブログではシリーズものとして、ルールにかかるコストについて、考察を深めていこうと思っています。 ルールを通じてコストをどう計算するか、それをどのように合理的に説明づけるか、一緒に考えていきましょう。
まとめ
- ルールにはコストが発生する。
- コスト負担は、ルールを設定した側が負担するケースもあるが、ルールを守る側が負担する場合も多い。
- ルールを強制することができる側は、コストを意識しないことがある。
- コストの算出を合理的に行えると、交渉を通じて現実を変えることにつながる。