ためしに、わかりやすく書いてみる 予算の先議権的な議論

大日本帝国憲法衆議院における予算の先議権は、単純に順序だけの問題に見えて、その実は、とても強い権限だということを理解するべきだ。

まず、予算は非常に重要である。内閣は予算がないとまったく動けなくなる。先議権により、衆議院が内閣予算を棚ざらしにすれば、内閣を潰すことができる。

次に、先議した衆議院の意思は、貴族院に押し付けられることになる。たとえば、衆議院多数党が軍拡を主張し、貴族院多数党が軍縮を主張しているばあい、軍拡の主張は衆議院で予算として含められる。貴族院軍縮にする案にすることはできず、軍拡予算を認めるか、前年予算のどちらかを選ぶことになる。たとえ、貴族院軍縮予算にしたとしても、衆議院で可決されることはないから、前年予算が執行*1されるだけである。衆議院の主張と矛盾しない限りで貴族院は予算を変更することができるだけだ。

 

上の説明の展開は、先議権が重要な問題である予算を取り扱う権利で、かつ、先議権がない貴族院衆議院に対して選択肢を狭められてしまうことを示してみた。抽象化して、権利とは他の人の自由を奪うものだということも説明してもいいかもしれないが、抽象的すぎるとついていけなくなる。このあたりの考察は次の回にしようとおもう。

ともあれ、わかりやすいということを分解すると、その問題が重要であることが示されることと、効果があることを示すことが必要なんだろう、ということまで今回例示できたと思う。

*1:大日本帝国憲法では、予算案が議会を通らなかった場合、前年と同じ予算が執行される。