解散権は、政党政治の危険性を抑制するために必要な総理大臣の権限だ

希望の党は、単に準備不足なだけだと思うけど、首班指名をする人を決めずに選挙に臨む様子を見ると、解散権を総理大臣が持つべきということがはからずも分かる。もし、議員でない人間(都道府県知事とか)が、多数党を支配する権力を持った時、内閣総理大臣は有名無実化する。

つまり、総理が解散権持たないと、政党の支配者が本当の権力者であるにもかかわらず、議会に責任を負わなくてもよい、無責任な存在となる。

政党政治は、本質的に国家を転覆させる力を持つ。国家の制度で、政党政治に対抗できる仕組みとして解散権があるのであり、二院制があり、司法権の独立がある。政党の本分は、政策決定と、行政府の民主統制にあるから、これを超える権力は制限されてしかるべきだ。

アメリカは大統領に解散権がないけど、大統領令と法案拒否権がある。古代ローマ護民官特権のようなこの拒否権は、共和制が等閑にしがちな人民保護の目的を有するから、解散権に比べたら目的が限定的だ。しかし、その分大統領は議会に対して責任を負わない。しかも、下院の任期は2年しかない。解散権がない分、議会の力も限られる。

イギリスは、解散権を議会に移したが、これは、解散権を首相が持った状態だと、連立パートナーの少数与党が自党の政策を国政に反映させる前に首相が裏切り、解散するという*1事態を恐れたためだ。本質的には、党のことしか考えていない、国民不在の議論だ。僕は、キャスティングボードを握った少数政党が、自分たちの議席を高く売りつけ、マイナーな政策が通りやすくなることは、社会変化を敏感に感じるようになるという意味で、悪くはないと思うが、それが解散を制限し、民意を反映しずらくすることによって達成するというのは、筋悪だと思う。

 

 

 

 

*1:

 

The Coalition and the Constitution

The Coalition and the Constitution